みどりのリビングラボ 読売SDGs フォーラム レポート 2022年11月18日2022年11月19日 midorism まちづくり、スーパーシティ、データ利活用 読売SDGs フォーラム レポート 2022年3月30日東京JPタワーホール&カンファレンスで開催された読売SDGsフォーラム「みどりによる都市の価値向上」についてのレポートをお届けします。沢山の学びがありました。ぜひ、お読みください。 フリーアナウンサー植村なおみ 読売SDGsフォーラム2022 みどりによる都市の価値向上 〜未来を創るみどりの経済効果〜 基調講演 「グリーンとクリエイティビティ」 〜まちの価値を高めるエリアマネジメント〜 森記念財団 理事長都市整備研究所 所長小林 重敬 氏 「緑地が人のクリエイティブに好影響を与える」。森記念財団の小林重敬理事長の基調講演は、”みどりが持つ意外な力”の話で始まりました。森林浴が副交感神経の活性化を促し、メンタルストレス及びストレスホルモンを減少させ、うつ状態の改善に有効だということや、自然が発する音色などが脳や身体そのものに影響を与え人間の創造性に寄与するという科学的実証など、その力を裏打ちする文献を紹介。また大手町や丸の内、虎ノ門ヒルズエリアにおけるみどりを活用した都市開発の事例をあげて、街の中にみどりを活用したWALKABLE(ウォーカブル)な空間を作ることの重要性を述べられました。そして、うめきた2期開発の”ひらめきの道”や”創造のみち”というクリエイティブかつWALKABLEな空間がイノベーション拠点となり得る、という新たなまちづくりへの期待でお話を締め括られました。 パネルディスカッションA 都市空間価値を高める 「みどりの経済効果と都市緑地の可能性」 続いて都市再生機構 島本氏、阪急阪神不動産 谷口氏、西尾レントオール 西尾氏、パナソニック 宮原氏をパネリストに迎え、東北大学公共政策大学院の御手洗氏がモデレートする都市空間の価値を高める「みどりの経済効果と都市緑地の可能性」と題したパネルディスカッションがスタートしました。 1ポンドの投資で27ポンドの効果があるというロンドン市の ”みどりの経済効果”の事例紹介やPark(公園)と呼ばずCommon(共有地)と呼ばれるボストンの事例を紹介し、みんなの大切なCommonであり、みんなで創り上げて守るCommonとして”うめきた”を育てていきたいと展望を示されました。 うめきた2期開発を見据えた実証実験場である「うめきた外庭SQUARE」における ”公園の日常管理運営”や”実証実験の多面的展開””稼ぐ空間づくり”などのノウハウの獲得、市民参加型の”リビングラボ”の土台構築を目的とした様々な取り組みを紹介し、そのための公園や緑地の排他的占有(イベントなどに利用する際の優先的使用権の確保)の重要性を語られました。 阪急阪神不動産谷口 丹彦 氏 災害が起きた時などに仮設を活用して屋外で通常業務を継続できるのかを検証するため、本社機能を屋外に移転 する実証実験”MIDORIオフィス”やフレキシビリティーを持った” 仮設”の可能性を拡げるための実証実験”仮設のチカラ”を紹介。 また既存のLQC(Lighter、Quicker、Cheaper)と呼ばれる仮設 コンテナを更に進化させ、木造で何度も使えるパビリオンなどへ転 用することによって大阪・関西万博を盛り上げていきたいと期待を 込めて話されました。 神奈川県藤沢市で展開するFujisawaサステ ィナブル・スマートタウン(FujisawaSST)で住民と一緒に新 しいビジネスモデルを開発する取り組みとして様々な実証実 験を紹介。自律配送ロボットサービスについては実際に動く 姿が映像で映し出されました。、また環境目標やエネルギー目 標、安心・安全目標をまち全体で設定した企業でいうBCP( Business Continuity Plan・事業継続計画)のまち版、CCP (Community Continuity Plan)の紹介など、2014年 に街ができてからのリアルな取り組みを話して頂きました。 ハーバード大学が提言した”都市改造をきっかけに大阪のレガシーをどう残していくのか”などの議論や、2025大阪・関西万博を契機にグリーンフィールドで展開する大阪でのスーパーシティを実現し、大阪・関西の都市力の向上を目指すためのディスカッションも展開されました。 最後に、御手洗教授のまとめとして、これまでの都市公園の価値というのは利用価値・存在価値がメインだったのが、これからは媒体効果・波及効果・経済効果といったことも考えていく必要がある。それが今回のパネルディスカッションの一つの答えだと述べられました。グリーンとクリエイティビティということも都市政策や都市公園の目標に加えていくことが重要だと語られて締めくくられました。 パネルディスカッションB 「みどり」が創る未来の暮らしとライフスタイル スマートバリュー 渋谷氏、marie claire 田居氏をパネリストに迎え、引き続き都市再生機構 島本氏、阪急阪神不動産 谷口氏、パナソニック 宮原氏、東北大学公共政策大学院の御手洗氏とともに「” みどり」が創る未来の暮らしとライフスタイル”と題したパネルディスカッションがスタートしました。 来場者の属性、気象データ、人流解析などのデータを利活用することでライフスタイルを豊かにする為の課題解決に繋げたいとの話がありました。2024年オープン予定の神戸アリーナを紹介するとともに、データの利活用という観点からも横展開で連携していきたいとの意欲を示されました。 参加費を払ってスポーツレクリエー ションという位置付けで地域を清掃する、SWEEP UP!という活動を通じて、参加者が公園の美化の維 持に主体的に関わることでモチベーションを維持し、 シビックプライド(まちへの誇り)を作り、ブランド化し ていくための実証実験について紹介されました。また STEAM教育の事例を用い公園の様々な活動の中に アートを取り入れることの重要性を語られました。 欧米ラグジュアリーブランドのSDGs への取り組みとして、アニマルフリーのレザーなどを使 用するステラマッカートニーの例や、きのこの繊維など を使用して服を作るクロエなどの例をあげ、今後のファ ッション業界は地球にやさしいことが大きなテーマに マになっていくだろうと語られました。またハイレベルな公園でのファッションショーな どのブランド展開が世界的に増えているとの事例を紹介されました。 ”FujisawaSST文化祭”や「うめきた外庭SQUARE」で行った”OSOTOでスポーツ”というイベントなどライフスタイルの観点からスポーツの持つ力を重要視した”まちづくり”の事例を話されました。また塗り絵をスキャンしてeスポーツの世界でレースを行うスケッチレーシングやみどりとイノベーションを融合したSTEAM教育の事例も紹介されました。 最後にモデレーターの御手洗氏がまとめとして、全体を貫く一つの価値観と してすべての人々がサスティナブル(持続可能性)を大きな目標としてやって いかなくてはならない、ライフスタイル、スポーツ、ファッション、さらには文化 に拡げて発信していき、人々の生活に帰着させていくことが重要だと語られ ました。また都市政策、まちづくり、都市公園の目標が今までのようにハード を作るだけではなく、クリエイティブなども含めて人々のライフスタイルや Well-beingなどの目標に変わっていく、そういう時代に入っていて政策の転換点を迎えていると語られ ました。そしてスマートシティやDXなどが話題になっているが、データというのは収集や分析が”目的”で はなく、Well-beingや課題解決を支えるものであり、そのためのデータ利活用を行っていくことが重要 であると語られフォーラム全体を締めくくられました。