みどりのリビングラボ 『これが喫煙所?吸わない人が心地良い喫煙所が情報発信の場に?災害時の拠点になる?』 2022年11月21日 midorism 公共空間利活用、賑わいづくり、防災 『これが喫煙所?吸わない人が心地良い喫煙所が情報発信の場に?災害時の拠点になる?』 「え?全然、タバコの匂いがしない…?」“うめきた外庭SQUARE”の一角、豊かなみどりに囲まれた喫煙所の中で、私は深呼吸をしてみました。やはり、タバコの匂いは一切しません。大のタバコ嫌いの私は、これまで喫煙所に良いイメージはありませんでした。喫煙所と言うのは、煙がモクモク上がり、苦み走ったタバコの香りが染み付いたところ。ところが、“次世代型喫煙所”なるものをJTが新しく作って実証実験をしていると聞き、恐る恐る足を踏み入れてみたのです。喫煙所の天井は開け放たれ、青い空が見えています。煙は上へと逃げて行くらしいのです。気がつけば苦い香りがしないばかりか、ヒノキの良い香りが漂っているではありませんか。ヒノキは99%以上のニオイを分解すると言われています。喫煙所の中にはイスとテーブルが置かれていて、そこでタバコ片手に仕事をする人すら居ました。確かに居心地が良いのです。 “次世代喫煙所”の入り口には出入りする人間の人数を感知する“人感センサー”があり、制限人数を超えて入ろうとすると、センサーの画面に『✖️』が表示され、注意喚起するシステムになっています。必要以上に密度が高くならないので、居住性も確保されているのです。さらに見回すとデジタルサイネージを発見しました。「サイネージには街の美味しいお店の情報や地域のイベントのお知らせなどを載せられるんですよ。」振り返るとJT関西法人営業部の藪内文彦さんが嬉しそうに微笑んでいました。 「私たちは、タバコを吸うだけの場所から、地域の情報を発信する場所に喫煙所を変えたいんです。人が集まって賑わいが出来る。人と人とのコミュニケーションからイノベーションが生まれたら素敵じゃないですか。」確かに、タバコを吸うためには数分間、喫煙所に滞在しなくてはなりません。会社によっては、喫煙所に集うタバコを吸う人だけで情報共有される文化もあるそうだとか…。喫煙所は立派な情報交換の場所なのです。つまり、そこにデジタルサイネージを置けば、積極的な情報発信にも活用できると言うことです。地域と利用者を結びつける場所。地域に根付いた喫煙所となるのでしょう。従来の閉鎖的なイメージから180度転換し、オープンなコミュニケーションの場に!逆転の発想に驚く私に、藪内さんは更に重ねて続けます。「万が一、災害が起こったら、避難する拠点にもなるんです。防災グッズや担架も保管しておけますし、入り口の横にはAEDも設置してあるんです」。近隣のビルが閉鎖されていても、屋外に設置されたAEDなら24時間使うことができます。 大規模災害が発生した際には大阪駅周辺に約7万8千人の帰宅困難者の発生が想定されています。うめきた2期のうち公園部分の4・5ヘクタールには、そのうちの3万人近くを収容し、応急処置や物資提供の拠点に出来るのです。喫煙所の天井には太陽光発電のパネルも備えています。普段はデジタルサイネージに電気を供給していますが、非常事態にはスマホの充電や、電気ポットでお湯を沸かしたりするのに使えます。またデジタルサイネージはWi-Fiでインターネットにつながっているので、リアルタイムで被害の状況や避難情報を表示しすることも可能です。“次世代型喫煙所”を出ると、子供たちのはしゃぐ声が聞こえてきました。実は喫煙所は植栽に覆われていて、その隣にはみどりの空間があります。そこにはチョウチョや幼虫が好物である植物が植えられていて、春には卵から生まれた青虫君が成虫になり、また、そこに卵を産みに帰って来ます。そんな緑豊かな場所なら、お母さんたちも安心して子供を連れて来られそうです。 地域の情報発信が出来、憩いと交流の場となる防災の拠点。“次世代型喫煙所”が果たす新しい役割を探るための実証実験は、2022年の12月まで続きます。