『物を売るのではなく考え方や想いを伝えるマルシェ?訪れると地球想いになるマルシェとは?』

『物を売るのではなく考え方や想いを伝えるマルシェ?訪れると地球想いになるマルシェとは?』

マルシェの名前は『うめきたmeet fun marche』。11月の週末「うめきた外庭SQUARE」開催された、そのマルシェは何の変哲もない普通のマルシェ…に見えた。

最初に訪れたのは『UMA Cafe 』のテント。馬を使って山から下ろして来た木材で燃料ペレットを作り、そのペレットを使ったピザ釜で“包みピザ”を焼いている。何故、今の時代、馬に木材を運ばせるのか?第一に考えられるのはトラックを使用した場合に排出されるCO2を削減するため。しかし、カーボンニュートラルを目指しているだけではないようだ。

実はここ数年、林道が少なくなりつつあるらしい。今日の森林·林業を取り巻く環境は、担い手の減少や高齢化、木材価格の低迷など大変厳しい状況にある。使われなくなり荒れた林道をトラックが通るには困難なため、馬で木材を運送すると言うのだ。馬なら人が通れる幅があれば荷物を運ぶことが出来る。間伐等の森林施業が十分に実施されず放置されれば、森林の持つ多面的機能が十分に発揮されなくなってしまう。馬を使って木材を運ぶことが出来れば、山に手を入れることが出来る。地球に優しく、そして雨水を貯めるなど森林の機能を存分に活かすために、馬を活要するのだ。

そんな馬によって運ばれた木材ペレットで焼かれた、ほかほかの“包みピザ”を一口頬ばる。香ばしいピザ生地にトロットロのチーズがとける。

ピザを食べながら、日本の林業に想いを馳せた。

次はどこのお店に行こうか迷っていると、『針金おもちゃ』の看板が目に飛び込んで来た。子供たちで賑わっている。針金で作ったゴム鉄砲を使って射的が行われていた。小さい頃、割り箸でゴム鉄砲を作ってもらったのが懐かしい。おもちゃ屋のおじさんと子供たちが仲良く遊ぶ光景を色々なところで見た。しかし、最近は駄菓子屋を見つけることすら難しい。昔は…駄菓子屋さんや近所のおじさんが子供たちのヒーローだった。

ほっこり懐かしい温かい気持ちになりながら、ぶらぶら歩いた。すると…お店の看板はないが、フェルトで出来た鞄が目に入る。よく見ると“コンポスト”の文字が見えた。最近、私が興味を持っていたテーマのお店のようだ。

「こんにちは、このカバンって、もしかしたらコンポストですか?

『そうなんですー!分かって下さって嬉しいですー!』満面の笑みで迎えてくれたのは、普段は看護師さんをしている中原千尋さん。『世の中からゴミをなくしたい!』と言う一念で2年前からコンポストのアドバイザーになったそうで、今では色々なマルシェでコンポストを売っている。

コンポストと言うのは、簡単に言えば「堆肥をつくる容器(composter)」のこと。家庭からでる生ごみなどの有機物を、微生物の働きを活用して発酵・分解させ、堆肥にする。生ごみや糞尿を集めて堆肥にすると言うのは、日本では昔から伝承されてきた大切な知恵のひとつだ。循環型社会、まさにサステナブル。捨ててしまえば生ごみにしかならないが、分解・発酵させれば堆肥となって野菜や植物を育てることが出来る。コンポストはゴミを暮らしに役立つ堆肥にする容器なのだ。

フードロスとともに、生ごみの活用にも興味があった私。でも、微生物を使うのが少し面倒くさそうで、今までチャレンジ出来なかったが、これをご縁にコンポストを一つ購入。なんと!中原さんの人生初のお客さんになった。

「うめきた外庭SQUARE」のマルシェを一通り巡って、ふと思った。「あれ?私、マルシェにお買い物に来たハズなのに…色々な勉強をしている。」気がつけば、日本の林業など社会の状況や地球を守る小さな知恵。そして日本の社会には昔からあった地域の人たち皆で子育てをする習慣や、勿体ないの精神、日常のものを無駄にしない暮らしの知恵などなど、色々なことを学んでいた。

今回、このマルシェを主催している山下江里奈さんは語る。

「コロナ禍もあって、私の周りを見ても悲観的な人とか暗い人が多くなったって思ったんです。

だったら皆を集めてワイワイ、美味しい食べ物や好きな雑貨、リラクゼーションで元気になって貰いたいと思って、このマルシェを企画しました。参加された約40店舗の皆さんは、自分から参加表明してくれた人ばかりです。買い物に来てくれたお客さんは勿論、売っている人も元気になれるマルシェにしたいんです。もちろん沢山売れたら嬉しいんですけど、一番の目的は、例えばコンポストみたいに地球環境に優しいものとか、環境を気にする優しさや想い、みんなで支え合ってする子育てと言うコンセプトを伝えたいんです。“ものを売るマルシェではなく“考え方や想いを伝えるマルシェ”。家に帰ってから、環境に良いことや子育て、親子で楽しむことが、自然と皆さんの身について居たら嬉しいです。」

 

買って帰ったコンポスト。翌日の朝からバナナやみかんの皮を入れてみた。気がつけば、私も環境のために一歩踏み出していた。