みどりのリビングラボ 『生配信された市場の商品を見て発注!ネット上の“セリ”に参加する新しいライブコマースの誕生?』 2022年11月24日2022年11月24日 midorism 『生配信された市場の商品を見て発注!ネット上の“セリ”に参加する新しいライブコマースの誕生?』 【誰もがセリに参加できる、新しいライブコマースの形】インターネットのライブ配信で、様々な商品を売るライブコマース。普及が先行する中国では、わずか1時間の配信で数億円を売り上げることもあり、日本でも徐々に注目が高まっています。そんなライブコマースを進化させてみたら大きな変革が起きそうです。配信を行う個々の企業ではなく、ネット上に市場を作り、生で“セリ”を行うのです。どんな遠隔地からでもその市場に出品でき、そして誰もが、生配信で行われる“セリ”に参加することが出来たらどうでしょう?日本海の豊富な魚場近くの港で、漁師さんは獲れたての魚を。山奥で山菜採りをして暮らすおじさんは、たまたま採れた珍しいキノコを。北海道の農家の人は朝採りのトウモロコシを、ネットで繋いで、ダイレクトに市場に出品して売ることが出来ます。お客さんは、生配信の市場で見たものを、家に居ながらにして買うことが出来るんです。間に入る人が少なければ、それだけ安く、そして、採れたて、獲れたて、捕れたてのものを買って、届けて貰うことが可能です。最近、料理の腕前が玄人はだしというグルメも増えていますが、“ネット上の市場”では、たまたま獲れた珍しい食材を探すことも出来ます。生産者にとっても、少ない量や不ぞろいなどの理由で従来は市場に出せなかった魚や野菜を販売することができ、大きなメリットを享受できることでしょう。 【IoTが美味しいをスピーディーに】もちろん、漁師さんや、山奥のおじさん、北海道の農家の方が個々に発送しようとしたら大変な手間がかかってしまいます。輸送に関しては、生産者が近くの集積場まで運び、そこからは大型トラックで大都市の公園のマルシェに届けるのは如何でしょうか?そうすれば、購入者は近所の公園まで歩いて商品を取りに行けば良いのです。例えば、東京の「バスタ新宿」や「バスターミナル東京八重洲」、あるいはJR大阪駅のバスターミナル近くの公園、つまりうめきた二期で出来る「都市公園」にそんなマルシェが出来たなら、人を乗せるバスに、農作物や魚介類を積んで運べます。人を運ぶバスを利用出来たら、人と物を同時に届けられるので、輸送運賃はリーズナブルに。その上、輸送のための燃料も削減、つまり排出されるCO2も削減できて地球に優しくなれます。皆が望むものの売り買いが素早く出来て、その上、地球にも優しいなんて、夢のようなシステムではないでしょうか?【敢えて対面販売でお買い物の楽しさを】『うめきた外庭SQUARE』では、週末、そんなネット上の市場を実現するための第一歩である実証実験が行われました。まずは和歌山県の農家と大阪市中央卸売市場、そして『外庭SQUARE』の公園マルシェ。その3箇所を繋いでの生ライブが配信されました。公園マルシェでは農業に従事する“農業ギャル”と言う20代の女性5人のユニットが、自分たちで育てた野菜と一緒に、前日に運んで来たみかんとみかんジュースを売っています。 ネットのライブ配信では、タワワに実るみかんの前で、和歌山県湯浅町の「果樹園紀の国」を運営する宮芝弘己社長が、有田みかんの魅力を語ります。ジューシーで美味しそうなみかんで作られた無添加のジュースをごくごく飲む姿がモニターに映し出されました。その日の気温は20℃を超え、汗ばむ陽気。みかんジュースを買う人が続出しました。また大阪市中央卸売市場からは、下浦商店の橋詰由美さんが、その日、届いた新鮮な野菜を一つ一つライブで解説。つやつやで立派な野菜は、モニターを通しても、その風味が伝わって来るようでした。そして、生配信が終わった1時間後には、中継で披露された美味しそうな野菜、和歌山のズッキーニや徳島の黒キャベツなど14種類が『外庭SQUARE』のマルシェに届いたのです。中継で見た新鮮さそのままに目の前に並ぶ野菜たち。1時間前にネットの市場で見た新鮮な野菜を、1時間後に手に出来る。これは、なかなかの魅力でした。 「やっぱり手にとってみると野菜のハリが違うでしょう?このホウレンソウは、かなりできが良くて、生でも食べられます。食べてみる?」。中央市場から野菜を運んで来た橋詰さんが、お客さんにホウレンソウを手渡します。『えっ?これ、ホウレンソウですか?めちゃくちゃ甘い!』。思わず会話も弾みます。 “ネット上の市場”が実現すれば、こうしたやりとりもモニター画面を通じて出来るようになります。注文したものが宅配で届くだけでなく、詳しい野菜の説明もしてもらえると「またこの人から買いたい」と思います。「ありがとう」の笑顔、「またお待ちしています!」の言葉。前回の感想を伝えたり、次に買いたい品物をリクエストしたり。ネットの便利な部分はそのままで、対面による買い物の醍醐味を残し、ワクワク感も得られるならば、きっと大勢の人がネット市場を活用するでしょう。 ネットで情報を発信、生中継で伝え、その商品が目の前で展開される。まさに欲しいと思った瞬間を逃さず、目の前に商品を並べることで購買意欲をかき立てる。そんなライブコマースを市場に転換することで、売り手と買い手、私たち皆が手にするメリットははかりしれません。