コロナで注目を集める可動式店舗

コロナで注目を集める可動式店舗

フードトラック(キッチンカー)を活用した移動型の飲食業が急速に拡大しています。新型コロナウイルスの感染拡大で外出や店舗での食事が制限されたことがきっかけとなり、料理のテイクアウト需要が一気に伸びました。
「店に来てもらえないなら、出かけて行って販売しよう」。コロナ禍を生き延びるため、移動販売へと業態転換したり、新規参入したりする飲食店も増えています。テイクアウトなので、顧客との「3密」を回避できるほか、家賃もかかりません。リモートワークの普及に対応し、営業エリアも都心のオフィス街から、郊外の住宅街へと広がっています。

うめきた外庭SQUAREでも、2020年の開設時からイベントでのフードトラックの出店は恒例となっています。周辺の飲食店のほか、独立開業を目指す若者、飲食業への新規参入を目指す異業種が続々と出店しています。

外庭でのイベントを通じて、フードトラックが抱えるいくつかの課題も見えてきました。

移動式のフードトラックは立地のリスクや初期投資の負担は低く抑えられますが、厨房設備やスペースには限りがあります。このため少ないメニューでの集客を余儀なくされます。特に屋外は天候次第で売れる商品が変わるため、限られたメニューでは対応が困難です。また、使い捨て容器で提供するので、どうしてもゴミが多く発生し、環境に優しいとは言えません。

フードトラックに続いて今後増えそうなのが、今回実証に取り組むコンテナハウスを利用した飲食店ではないでしょうか。

コンテナハウスは輸送用コンテナのようなシンプルな箱形の鉄骨建築物で、フードトラックと固定店舗の中間的な形態と言えます。土地の確保や電気、ガス、水道などの工事は必要ですが、いざとなれば移設可能なので、客入りが悪い場合など立地リスクを一定軽減することができます。
街中でもときどき、コンテナハウスを活用した店舗を目にすることがありますよね。

コンテハウスはフードトラックに比べ頑丈で、はるかに広い空間が確保できます。このため固定店舗のように本格的な厨房設備を導入し、スタッフの人数も多く受け入れられるので多彩なメニューの調理が可能です。例えば、高火力が要る本格的な中華料理もできます。固定店舗と同等の飲食営業許可を取得でき、繰り返し使える食器での提供や料理を席まで運ぶサービスも可能です。

課題はコストです。コンテナハウスは、低コストで設置できるイメージがありますが、建築基準法に基づく建築確認申請が必要になります。安全性など建築基準に適合した店舗にするためには、思いのほか建築費用が膨らんでしまうケースもあります。
特に基礎工事は、従来は現場で型枠や鉄筋を組み立て、生コンクリートを流し込んで作るため、多くの職人と2~3週間程度の時間がかかっていました。

そこで今回の実験では、プレックス(神戸市東灘区)が独自開発した「プレキャスト基礎」を使った工法でコストを抑える計画です。あらかじめ工場で生産したコンクリートのブロックを持ってきて並べるだけなので、職人がいなくても1~2日で工事が完了します。

ブロックもコンテナハウス同様に別の場所でリユースができるので、より環境に優しくなります。

安価な費用で手軽にコンテナハウスの店舗が開設できるようになれば、出店のハードルとなる立地による集客リスクの不安解消につながります。近年は、都市公園をはじめとする公共空間の活性化のためカフェやレストランを誘致する試みが各地で始まっています。
外庭での実験が足がかりとなり、緑の木々に囲まれながら、高級レストランのディナーやアフタヌーンティーを楽しめる場所が増えていったらと考えています。